ラビュー・ラビュー

「照れるからってそんな、それはかわいい……かもしれないけど、いやそうじゃなくって」
広場の真ん中でルークに叱られて……叱られているのだろうか。アーロンは頭を掻いた。
「人の話は真面目に聞く!」
噴水の水が高く上がる。これで二度目だ。ルークのはなしが始まってから十分くらいは経ったんじゃないだろうか。
僕ら恋人同士じゃないか、外で手を繋いだっていいだろ、隠す理由なんかないんだし、とルークは言う。
それはわかる。わかる。わかるけれども。
「ショッピングモールのど真ん中で言うことじゃねえだろ」
がやがやとした人混みと小さな噴水。アーロンとルークは休日にショッピングモールに買い物に来ていたのであった。新しい服を買うとかどうとか、ディナーのための肉は最後に買おうとか、そういうことを話しながら歩いていて、ルークの伸ばした手を、取ろうかためらったら、こうなった。
「でもこういうことはきちんと話しておくべきだと思ったんだ。これで三回目だし」
確かに、二人で外に出かけたときに、手を繋いだような記憶はない、ような気がする。
「第一、照れてるとか言ってないねえからな」
「それ以外に理由があるのか?だって君、顔真っ赤にしてるじゃないか」
そう言われると言葉に詰まる。実際そうだからだ。いや顔が真っ赤だと言うつもりはないのだが。
外で誰かと手を繋いで歩くタイプの『お付き合い』は今までしてこなかった。あるとしても一夜きりの『恋人』、白昼堂々とデートなんてものからは程遠い。
ルークと付き合うことになって、同じ家に住んだり、週末出かけたりするようになって、どう振る舞っていいのか、わからなかったのかもしれない。
真昼の太陽のようなまっすぐな瞳で彼は言う。
いつだって手を繋いでいられるわけじゃないんだから、
「今くらいは、いいじゃないか」
遠くから呼び込みの声が聞こえてくるが、アーロンにとってそれは遠い世界の出来事だった、ルークが今ここにいること。ルークと今こうやって普通に暮らしていることは、何も普通のことではないのだった。一度はまるきりなくなったと思っていたものが戻ってきた、最良の形で。
アーロンはルークに手を差し出す。
「ほらよ」
ルークは笑顔でアーロンの手を取る。てのひらから伝わる体温はほんのすこしアーロンよりも高くて、なるほどこれが人間とともに生きる温度なのだ、と思う。

2021-05-06

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