[The world in the box]in the box - 2/2

彼はすべてを見ていた。
フィル・コールソンは優秀なエージェントであり、彼の友人でもあった。今だってそうだと、思っている。だから見ていた。
美しい世界に生きるコールソンを。
「みんな幸せなんだ。世界も平和なんだ。しかもそれは押し売りじゃない。私は何も売っていない。再分配しているだけだ、だってそうだろう、誰が水道局を責めるんだ?水なんかよりももっと豊富で、枯れることのない、キャプテン・アメリカを、世界に提供する。それだけだ。私たちは何も強制していない。彼らは勝手に正義を抱くだけだ。空を見て青いと感じるように、正しい行いをするようになるんだ、きみの望んだ正しさを。もう宇宙に脅威を感じる必要なんてない。どんなに恐るべき敵であろうと、世界は団結するからだ。何の迷いもなく、何の疑いもなく、ひとつの目的のために、自分の意志で。自分の意志でだ!」
S.H.I.E.L.Dの長官室には誰も立ち入らない。長官がいることすら忘れているものもあるだろう。彼がそう仕向けている。S.H.I.E.L.D副長官までで十分に運営できるように。副長官ですら長官のいないことに疑問を抱かぬように。
彼は部屋の中心にいる。彼はすべてを見ていて、しかし彼の言葉を受け取るものはいない。モニターに囲まれたその部屋、ホログラムデスクと、アームくらいしかない部屋。彼の傍には水で満たされた棺がある。そのガラスの向こうの水の中には誰かがいる。ショーウィンドウの内側にいるようなものはそれなりに動くのだろうが、微動だにしないそれが。目を開けることもないし、『魔法の言葉』を唱えても、誰かを探すことなんかないそれが。彼よりも高い身長を持つそれが。今となっては国そのものであるそのひと。世界のどこにでもいるがゆえに、どこにもいないそのひと。
「私たちは正しかった、そうだろう?キャップ」
いや、スティーブ。彼はこの世界において、彼以外誰も知らない名前を呼ぶ。

2015-11-25

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2025年11月21日