Metamorphōseōn librī

タローマンはこたつに入って紅白歌合戦を見ていました。年末恒例行事くらいは、タローマンも楽しみにしていることがあるのです。太郎汁しか飲まないので、こたつの上にみかんがあるのはあまり意味がないのですが――タローマンは意味など、あまり気にしていません。

さまざまなアーティストが楽曲を披露する中、タローマンは踊ったり笑ったりしていたのですが、後者は地球人類には観測しようのないことです。その途中でこたつはひっくり返ってしまいましたが、家の主がそのうち直してくれることでしょう。なんにせよ、タローマンは祭りを楽しんでいました。

しかしながら、タローマンが祭りをただ見ているだけで満足するでしょうか。タローマンはひとつ伸びをして、紅白歌合戦に行くことにしました。NHKまでは遠いけれども、タローマンには空間をぶち破るくらいたやすいことです。そういうわけでタローマンはワープホールを開けました。

どうせ行くのならば、いちばん盛り上がるところがよいでしょう。タローマンは、かつて一緒に釣りをしたひとを出演者の中に見つけました。そのひとが盛り上げ上手なことを、タローマンはよく知っているし、魚釣りやその他のゲームをやったのは、タローマンにとっても楽しい思い出でした。

そういうわけで、タローマンはそのステージに行こうとしたのですが、なんということでしょう、対奇獣バリアがホールの周りに張ってあります。人類はいつのまにそんな技術を手に入れたのですね。さすが昭和100年と言わざると得ません。まあ、紅白歌合戦は今のところ人類の祝祭のようなので、仕方のないことなのかもしれません。

しかしながら、そんなことで諦めるようなタローマンではないことを、読者のみなさまもよく知っていることでしょう。奇獣バリアが張ってあるのならば、奇獣でなければよいのです。

うじうじと考える必要はない。すべてのマイナスをプラスの面でつらぬけば、マイナスだと思っているものがプラスになって転換してくる。そう、岡本太郎も言っていました。

そして、タローマンは振り回しやすいうちわのかたちになりました。そうすると、対奇獣バリアはうちわだと判定して、タローマンを中に入れてくれました。

ここはもう舞台の上、もうパフォーマンスは始まっています。

うちわに気がついたミュージシャンは、満面の笑みでそれを手に取りました。

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