「お前には親しい友だちがあったか」
「ええ、クールフェラックという者です」
「今どうしてる?」
「死んでいます」
「それでいい」
まだ早いだろう、と、ジルノルマンは最後の手紙を文箱に入れる。この手紙を読んでも、読まなくても、彼がマリウスに掛ける言葉は変わらなかっただろう。それでも確かにここに祈りのあることは、ジルノルマンにも十分理解されたのであった。彼にもかつて友人はあった。老人となったときに思い出されるのは青春の断片、その断片と同じ色をした手紙であった。
名前しか知らない手紙の送り主は、確かに死んだのだという。同じ文言だけを正確に送り返してきた青年は、彼とは思想を違えるどこかで死んだのだという。
今はまだ、読むときではない。しかしいずれ手渡す時が来るのだ。
ジルノルマンは文箱に丁寧に鍵を掛け、そのいつかのために、貴重品入れの中に保存する。
お前にはこの私と、すばらしい恋人がいる。そして、かつて、すばらしい友人がいたのだ。
2022-05-30
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