セントエルモの火 - 3/3

Near side (from me)

炎と呼んでも差し支えないだろう。
ローガンの持っていたランタンが急に光り始めたのは、小さな火を与えてやってからだった。交換所に行く度にもらえるそれを、何度ランタンに与えたことだろうか。
そうして、それといっしょに、乳白色は消え去った。これまであった影はすべて、見えることはなくなった。
代わりに山頂にいる。
なぜここが山頂だかわかるかと言うと、地面を見下ろせるからだ。遠くに地平線が見える。
ランタンの明かりは落ち着いている。ここの明るさなら、必要ないかもしれない。
登ったら、下るものだ。
ローガンは山を下ろうとする。ここがどこなのかを把握するために、振り向いても、岩しか見えない。そうなったら、とりあえず行くしかないのだろう。
道ならある。ご丁寧に杭もある。行きとは違って、帰りは結構楽そうだ。
行きとは?
そう思ったところに、案内人が現れる。白くはない。色を持っている。それ以外はあの都市の案内人によく似ていた。
「ええ、それが正しい」
案内人はいつもどおり、勝手に何かを判断する。

「これ以上何を案内するってんだ。道ならあるだろ」
「影の国から地上へは、何も持って行くことができません。ただし、ただひとつだけ、記憶を携えることができます。もちろん、細部は地上の光の中で消し飛んでしまうことでしょう。いくら鮮烈な夜の夢でも起きたら曖昧になるように」
ローガンの言を無視して案内人は話す。それから、いかがでしょうか? と言う。
案内人はまどろっこしく、発言内容は不明確だが、少なくとも嘘はつかない。今までのところはそうだ。
「それなら、あの夕日を」
ローガンはいくつかの夕日を見たことがあった。そのなかでも、最後に見たものを忘れたくはなかった。あの生活には面倒なこともたくさんあった。物理的にも上から目線のやつと暮らすというのは、気に食わないこともたくさんあったが、帰る家があるというのは悪くないことだった。
そんな僥倖が、ずっと続くというのは、ローガンの人生にとってありえないことではある。いくつかの期間にあったそれらは、破壊されたり、二度と戻れなくなることもあった。
そしてまた、帰れない場所ができた。
生きていればまた出会うこともあるだろう。生きていれば。出会ってもまた、うまくいかないだろう。
だが、だいたいのことは、楽しい生活の思い出でどうにかやっていける。そのように生まれついているのだ。誰かはともかく、自分は。

最後に案内人が問う。
「理由は」
「おそらくもう、二度とはないものだから」
世界は指示詞を理解する。
彼の願いは正確に実行される。

ウルヴァリン――ローガンの帰還は発生し、世界はもとに戻る。生きている正しい世界だ。
あの日の夢をどこかにしまったまま、ローガンは歩いて帰る。

2018-11-17

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