スターマーカー - 1/3

 もういなくなってしまったひとについて、最後まで覚えているのは声なのだとかいう。
 鮮明に思い出せるって、ずっとずっと願っていても、薄れていってしまうのに、最後まで抗うのが声なのだという。
 もちろん、今なら写真もあるし、ビデオもあるし、なんなら3D映像もある。忘れてしまっても、すぐに思い出すことができると思い込んでしまう。五感をフルに使って、記録しておくことができる。
 でもそれは記憶じゃない。
 記憶は薄れていくものだ。どんなに覚えていたいと願ったとしても。思い出す度にノイズが混じり、そのうち願望といっしょくたになった何かになってしまうだろう。ビデオを見たら、その記録に記憶が上書きされる。3Dのリアリティが、本当の記憶を縁取っていく。すでに忘れてしまったことのほうが多いだろう。ぼくは同じ年代のひとよりも多く、そういったことに出会ってきた。
 彼のはなしをしよう。
 今はまだ覚えている。あの声のことを、あの輝きを、あの器用な手のことを。
 案外不器用な人付き合いのことを、ラボに初めて連れて行ってくれた日のことを、アベンジャーズだと認めてくれた瞬間のことを。
 最後までヒーローだったひとのことを。
 ぼくはその声を知っている。語られたことを覚えている。
 大抵はくだらない会話で、時にはボイスメッセージで、たまに示唆的で、はるか先の未来を見ているかのような口ぶりをして。彼とくだらない会話をできることがあんなに貴重なことだとその頃のぼくは気が付いていなかった。
 前口上はこのくらいにして、本題に入らなきゃ。それはどの時だった? スカラーに受かった後かな。記念写真をモーガンさんに撮ってもらって、これからがんばれよ、だなんて言われて、ちょっとうれしくなって。
 そして彼はこう言ったのだ。
 
 醒めたまま見る夢の名前を知ってるか? 

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2025年11月21日