なんかよくわからないんですが今年に入ってからやたら本が読めるようになっており、今のところだいたい月20冊以上ペースである。その代わり映画とかをあまり見られなくなっているというのはあるが、可処分時間は有限だから仕方がない。そして今年は読む本の打率がとてもいい。こういう方向性の本が読みたいなと思うとそういう本を手に取ることができる。おもしろくなかったにしても「こういう点では学びになったな」みたいな感じになるし。
それはさておき今年上半期読んでよかった本5冊+1をやっていきます。+1なのはどうしてもこれを入れたいけど、それで1枠埋めるには特殊というか、これを読んだ時点で入れるしかない、みたいな本だからです。決めきれなかっただけとも言う。以下順不同。
1. スザンナ・クラーク『ピラネージ』
主人公の手記で進む話。どうやら主人公はたくさんの部屋がある迷宮のようなところにいるらしい。主人公はその迷宮を独自の方法で解釈しており、独自の記述をしている。主人公以外に生者が一名おり、「もうひとり」と呼ばれている。「もうひとり」は主人公をピラネージと呼ぶ。主人公は自分の名前はピラネージではないと思っている。だからとって名前がわかるわけではない。
最初の建て付けの時点でだいぶおもしろいのだが、それ以降の展開もよかった。「たぶんこうなんだろうな」もあるし、「そっちの方向に行くんだ」もある。そうなった上で、最後、最後に見えた光景が美しい。山そのものと山を表す記号、そのふたつに差異は存在するんでしょうか?
2. ジェフリー・フォード『最後の三角形』
SFとかファンタジーとか幻想文学とかそういう感じの短編が収録されている。なんといってもぜんぶおもしろいのがいい。特に「アイスクリーム帝国」「最後の三角形」「ナイトウィスキー」が好きだった。異界、自分の認知を超えたもの、魔術、そのようなものが存在する世界で、人々は時に自分の矜持を通し、時に世界に屈服する。
ジェフリー・フォードは長編も書いており、今読んでいるところだが、長編だとまた違う味がして楽しい。信頼できなさすぎる語り手が信頼できない話をしているのをずっと読んでいると事実確認をスタートしたくなる。
3. 円城塔『土人形と動死体』
ここ数年、円城塔を読む度にこれが最高傑作では?と言っている。今回も言った。ファンタジーの道具立てを使ったSFであり、「物語」の話。ダンジョンとか魔王とか(ユーザーネームを入力してください)とか出てくるけど、ある意味ではいつもの円城塔。収録短編のいくつかは他の本で読んだことがあったが、まとめて読むと意味が変わるようになっており、というか、これが既存作と書き下ろしで構成されていることにも意味があるような仕組みになっており、そんなことしていいの!?になった。
『ショートショートなSF』に世界観が類似したお話が掲載されているのでこちらもぜひ。自己の座標を書き換えられよう。
4. ウラジーミル・ナボコフ『ロリータ』
「いろいろな本で言及されている本を読もう」の一環で読んだ。書き出しがあまりに有名だが、これは「本文の最初」ではないことがけっこう大事だったりする。あと主人公がずっとツッコミ待ちの言動をしているので楽しく読める。いや起こっていることはぜんぜん楽しくないです。カスのパンチラインが多いんですがカスすぎて引用にためらう。小説がうまいからって何をやってもいいってもんじゃないぞ!
なんらかの物事について語る時、そこにはどうしても語り手が存在すること、物事を形容していく時、それは物事そのものではないため、絢爛豪華な形容を行えば行うほど物事から離れることについての話。じゃあどうやって書けばいいんでしょうかね?
5. クラリッセ・リスペクトル『水の流れ』
「わたし」が考えている、話をしている、それそのものを書こうとしている話……だと思う。とにかく「わたし」がずっと「あなた」に話しかけているのが大事。たまに中座したりする。「これ」は言葉にすることができないのだが、しかし言葉以外の何物でも「あなた」に届けるすべがない。そういったことをずっと言っている。トピックは変わる。急に人間が出てくる。急にいなくなる。別にそれは「わたし」にとって急なことではなく、必然であろう。そして「あなた」あるいは「わたし」は、この話の主導権を握っているのは、実は「わたし」であるということに気がつくかもしれない。その「わたし」って誰?
Ex. B・S・ジョンソン『不運な奴ら』
最初と最後以外の25パートを自由な順番で読む小説。特殊ギミック小説本が大好きなので買うしかなかった。ギミック系の話ってギミックをやっただけでえらいので必ずしもおもしろくなくてもいいかなってハードルを下げているんですけど、これはおもしろかった。「死んだ友人の話を思い出している男の話」にピンと来た人は読んでほしい。いろいろな思い出がある、断片的な思い出が。読者によって「思い出し方」に違いはあれど、すべてが「最後」に収束する。どんなルートを辿っても、終わりは同じ。
まだ売っているところはあるっぽいので気になる方はぜひ!こういうのは古本に出ない可能性のほうが高いので……出たとしてもすごい値段になるだろうし……
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