1.奇術師と人形
その奇術師が見せるマジックは、魔法と区別がつかなかったと伝えられている。右の手のひらから赤い花びらがこぼれて、地面についた途端に炎となり消える。握られた左手を開くと小指の先ほどのキリンが現れ、机の上をてくてくと歩く。ステッキを宙に舞わすと色…
奇術師と人形
神曲異聞――無限階層上昇編
無限の僕らが、無限の壁を超えて、ベアトリーチェに出会うまでのおはなし/3.6万字
中編
Chapter 5
壁はない。彼女は見えない。それはすべてが回収された後の世界のこと。〈レ・ミゼラブル〉は目を覚ます。目を開いたところで、見えるのは乳白色だけで、何も入力はされない。奇しくも、それは今の世界のありようと同じだったので、目が見えても見えなくても変…
She for me
Chapter 4
嵐が来た。そしてみなが消えていく。学舎の部屋は無限にあり、学舎のものも無限にあるはずだった。無限足す一は無限だし、引く一は無限なので、なにもいなくなることなどあるはずがなかった。なのに今、学舎のものは限りなくゼロへと近づきつつある。学舎に増…
She for me
Chapter 3
わたし――〈はてしない物語〉は、あかがね色の表紙を開く。表紙の裏と、次のページには図案が描かれている。中表紙の次に、目次がある。目次を過ぎると、赤と緑の文字で語られる物語がある。初めて読む物語だ。当然のことではあるが。まず「少年」が登場する…
She for me
Chapter 2
新しいものは、本の他に、何かを伴って学舎の中央広場に現れるのが決まりだ。学舎を上から見れば、大きな二つの円形から成り立っていることがわかるだろう。その円は五分の一ほどの割合で交差しており、長方形の壁で囲われている。中央広場は、片方の円の中心…
She for me
Chapter 1
わたしは見た。彼女を。それは水の中のこと、身長よりも少し深いプールの底に、もう少しで爪先が届こうとしたときだ。わたしは沈んでいく。彼女は水面へ向かう。彼女の脚が水底を蹴ったので当然のこと。彼女と目が合う。少なくとも、わたしはそう思う。そんな…
She for me
オチの先まで連れてって
ひょんなことから宇宙人とコンビを組むことになった芸人のはなし/4.6万字
中編
ある日、アロエース星人がやってきて
反差別Aスペクトラムアンソロジー寄稿作品再録/1600字
短編
水中落花
世界を守るために記憶を石にして吐き続けなければならない。その役目を与えられた青年と、青年を見守るかみさまのはなし/1.6万字
短編
石にも花にもまつろわぬ
人間が死ぬと性別によって石か花になる世界で、どちらにもなりたくないはなし/2.4万字
中編
Goodbye once (more)
どうやら世界は一度終わっているようだ。そんな世界で手紙を書き続けるひとのはなし/2.7万字
中編