les croyances - 3/9

その家はパリの郊外にある。

庭には薔薇の木が生えているが、季節外れのようで蕾もない。しかし枯れてはいないし、雑草も少ししか生えていないから、管理を最近怠っているだけなのだと容易に推測される。庭を通って家の前に立ち、呼び鈴を三度鳴らしても返答はない。木製の扉を開けようとする。鍵がかかっていないので、簡単に中に入ることができる。
見た目よりも広いその部屋には、机と、本棚と、寝台が置いてある。
まず目を引くのは寝台である。と、言うよりも、そこに敷き詰められた薔薇の花弁である。真っ白な敷布が敷かれているその上だけでなく、周りにも深紅の花が零れている。誰かが寝ていた痕跡はない。まるで今朝方ここを去ったかのようだ。
落ちている花弁のうちの一枚を手に取ると、瑞々しい触感もつかの間、すぐに塵となって消えてしまう。他のものを手にしても同じことだ。
するとすきま風が吹き込んで、部屋にあった薔薇をみな散らしてしまう。後には甘く、芳醇な香りだけが残る。
そこで右手に目を遣れば、雑然とした本棚には、古典文学作品から最近の娯楽作まで、無造作に突っ込まれている。

近くの机の上には手帳が広げられていて、筆記具と灯りが書いている途中で立ち去ったかのように放置されている。
手帳の横には空き瓶が転がっていた。中身を零してしまったのではなかろうか、半分以上に渡る葡萄酒の染みがあるので、内容を読み取ることは非常に難しい。

辛うじて、最後の頁にある書きかけの一文のみを読むことができる。

 Je crois à toi――きみを信仰しているよ

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