les croyances - 6/9

クールフェーラックが二階から落下してきて、駆け寄ったはいいものの彼はすでに絶命していた。銃剣を握ったままの彼の瞼を閉じてやる間すら無く、銃剣がコンブフェールの左腕を切り裂く。痛みを感じるより先に、耳元で銃声を聞いた。
戦況は大荒れだ。誰が敵で、誰が味方なのかわかりもしない。戦闘に不慣れな学生たちは徐々に離散していった。
大砲部隊に壊され、大勢の国民兵に突入されたバリケードはもはや陥落したも同然だった。それでも抵抗する若者たちによって、阿鼻叫喚の光景が広がっている。
コンブフェールは背にして戦っていたアンジョルラスを見失い、防塞の中心を支える最後のひとりとなっていた。
もう長くはないのだろう。ならば、ひとりでも多く生かすことを。そのために一秒でも長く、自分のいる場所を保たせようと、コンブフェールは弾の切れたカラピン銃を鈍器代わりに使って応戦していた。
倒れた若者を見つけ、抱き起こそうとした瞬間、背中に痛みを感じた。刃を抜かれてそのまま、地面に倒れ込む。
抱き起こしたのが『敵』であることを、コンブフェールは知らない。これから知ることもない。しかし、
僕はひとを助けた。
それだけでコンブフェールにとっては十分だと思われた。自分のやるべきことは、ひとに手を伸ばすことだったのだとようやく悟った。だから後悔はない。
思い残すことがあるとすれば、

もしかしたらあの時、きみに手を差し出していたならば、あるいは。

曇りゆく視界に最後まで残ったのは、濁りひとつない『彼』の瞳の空のみで。

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